先週末に処暑を迎え、日没も段々と早まってきました。
子供たちは夏休みのカウントダウンに苦悩している頃でしょう。
(隣家の小学生も悲鳴を上げています)

さて、2年近く前に書籍デビューした、「水の家系」を標榜する
「現代の陰陽師」
を皆さんはご存じでしょうか?
第27代水の陰陽師・安倍成道という人物です。
好評発売中の月刊『ムー』2014年9月号では付録として安倍成道氏謹製の「陰陽符」シールが収録され、誌上販売なども行われ、ホームページを運営するという、何とも「現代的」な陰陽師のようです。



ここまで読んでいて
(胡散臭い!)と思ったアナタは、正常です。

そう、彼が述べるような「家系」は
史学的には存在せず
(「安倍成道」も本名ではなく、陰陽道研究家の方々は悉く無視しています)、
陰陽五行説の解釈や符術の知識などは中学生レベルで荒唐無稽!
……なのですが、文学作品としてはドラマありマンガ・ゲーム的な初期設定ありで、なかなか楽しめます。
かく言う私も、敬意を表して「ラノベ」と呼ぶほど楽しんでいる「小説」ファンの一人です。
(付録のシールを使って、グッズを自作するくらいファンなのですが、
ボッタクリの霊感商法であることは明らか
です。少なくとも霊符術を一通り学んでから出直して欲しいですね。)


偽物はニセモノらしく
(シールの使用例)

しかし、占いを志す初心者にとっては、彼が説明する「五行」の解説を鵜呑みにすることで、誤った解釈をしてしまう場合もあるかも知れません。
また、右も左も判らない状態で、インチキ陰陽師(
陰陽師の仕事は占術がメイン
だったので、霊感商法と霊能者紛いである彼に、陰陽師と名乗る資格は官職が現存していたとしても在りませんが)に騙される可能性もあるでしょう。
そこで、今回は27代目の考える「五行」の家系について眺め、
彼が如何に「五行説」を理解していないのかを見てみましょう。


木の家系

結界張りを得意として、
暦や占術もこの家の伝統
らしいです。(『現代の陰陽師 安倍成道』P.106参照)

火の家系

呪(じゅ)=攻撃を得意とする
呪術の専門家
。(同著P.107参照)

土の家系

地相・家相鑑定が専門らしいです。(同著P.107参照)

金の家系

薬の調合や医術的なことを得意とし、
西洋の神秘学でいう、錬金術師的な役割を担っている
そうです。(同著P.108参照)

水の家系

基本は、守りにある。要人の守護であり、そのための理論や術を磨いてきた
そうです。(同著P.108参照)

宗家

総合的に高い技量をもち、
なにかことを起こしたりするときには、この宗家がリーダーシップをとることになる
そうです。(同著P.108~109参照)



これらを眺めると、マンガやテレビゲームの設定のように
「こうであって欲しい」という理想像
を描いていることが判ると思います。(火=攻撃というのはバ○クロスのような魔法、土=地相鑑定・金=錬金術というのは安直な連想ですね。)
五行のそれぞれに統一感の無い「得意分野」を設定しているので、
(著者は娯楽作品が好きなんだなぁ)
と思ってしまいます。

まず、
「五行」というのは五つ揃って初めて有用なものとなります。

例えば、「四時(季節)」に配当する場合、
「物事の発達過程」
を表現します。
春(木)
は草木が芽生えるので「生」まれ、
夏(火)
は陽気が動植物を成「長」させ、
六月(土)
は「養」育し、
秋(金)
には実った成果を「収」穫し、
冬(水)
はそれを貯「蔵」する季節です。(実際には、生・長・養・収・蔵は春・夏・六月・秋・冬を表すだけの固定的なものではなく、応用して五行の発達段階を示します。 『五行大義』第四、一、参照)
それぞれの役割をリレーのように分担して繋ぐことで、万物の循環を円滑に行う
のです。

次に、彼は
火に「攻撃」的なイメージを当てていますが、
五行説では刃物につながる金がうまく働くと「義」をもって誅伐しますが、行き過ぎると手当たり次第に「攻撃」してしまいます。そこで
金に配当される太白星(金星♀)は戦乱を象徴する凶星
ともされます。
つまり、
「攻撃」を当てるのであれば金でなければならない
のです。

更に言えば、彼の
「陰陽符」には五芒星が描かれていますが、
五行相剋を五芒星で表すのは大正~昭和期からなので、安倍晴明の時代には陰陽五行説=五芒星という認識は無かった
と考えられています。(安倍晴明撰と伝えられる『占事略决』にも、五芒星や五角形は記されていません。)


清家文庫『占事略决』
五行相尅(剋)の記載に
五芒星や五角形は無い。

このように、
少しでも陰陽五行説を掘り下げて学ぼうとすれば直ぐにボロが出る程度の知識
を駆使し、娯楽作品の要素を取り込んで金儲けの手段にしているのです。
その才能を「フィクション作家」として活かしてゆけば、世の中の役に立てたかもしれない
事を思えば、とても残念な気持ちになります。

「占いは全てインチキ!」などと思わずに「正しい」占いの基礎知識を身に付けることで、占いや呪術紛いの行為で騙そうと企んでいるインチキに対抗することもできるのです。

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